応援する側とされる側の心理:有紗が見つめた母としての気づき

母親・妻の視点

美咲の戸惑いに母として向き合う

高校3年生の美咲が「友人を応援できない気持ち」に悩んでいることを知ったのは、夕食の片付けが終わった後のことだった。有紗はキッチンで手を拭きながら、美咲の話を聞いた。

「お母さん、私、由佳のことを素直に応援できない時があるの。」
美咲の表情には戸惑いが浮かんでいた。有紗は椅子に座り、美咲と目線を合わせて答えた。
「応援できないって、どういう時に感じるの?」

美咲は少し間を置いて話し始めた。
「由佳が文化祭の実行委員長としてすごく頑張ってるのを見て、すごいなって思うんだけど、同時に自分が何もしてないような気がして、疎ましく感じるんだ。」

その言葉に、有紗は美咲の心の中で何が起きているのかをじっくり考えた。


応援する側の心理:母としての体験

有紗は美咲の話を聞きながら、自分が若い頃に感じた似たような気持ちを思い出した。大学時代、友人が次々と就職を決めていく中、自分だけが進路に迷っていた時のことだ。

「応援したい気持ちと、自分の焦りや不安が入り混じって、心の中がぐちゃぐちゃだった。」
そう呟くと、美咲は驚いた表情で母を見た。
「お母さんも、そんな風に思ったことがあるの?」

有紗は微笑んで答えた。
「あるわよ。みんながうまくやっているように見えると、自分だけが取り残されている気がしてね。でも、そんな時に気づいたの。応援できないのは、相手がすごいからじゃなくて、自分が不安だからなんだって。」


応援される側のプレッシャー

有紗はさらに、美咲にこう問いかけた。
「でもね、応援される側も簡単じゃないのよ。由佳ちゃんはどう感じていると思う?」

美咲は少し考え込んで答えた。
「…もしかして、プレッシャーを感じてるのかな?」

有紗は頷きながら言った。
「そうね。頑張れば頑張るほど、人からの期待や注目が大きくなる。それが嬉しい時もあるけど、負担に感じることもあるのよ。」

この話を聞いて、美咲はハッとした表情を見せた。
「そっか、由佳も簡単にやってるわけじゃないんだね。」


応援できない自分を許す

「でもね、美咲。」
有紗は柔らかな声で続けた。
「応援できない自分を責める必要はないの。そんな時は、自分の気持ちを見つめ直すチャンスだと思えばいい。」

美咲は少しずつ気持ちが楽になるのを感じた。
「応援しなきゃいけないって思い込んでたけど、無理して応援するより、自分の気持ちを整理する方が大事なんだね。」

有紗は笑顔で頷いた。
「その通りよ。応援する気持ちは自然と湧いてくるもの。無理に湧かせる必要はないの。」


応援することで広がる可能性

翌日、美咲は友人の由佳に会い、自分の気持ちを正直に伝えた。
「由佳、実は、あなたを応援したいのに、時々複雑な気持ちになることがあるの。自分でもよく分からなくて…。」

由佳は少し驚いたが、すぐに笑顔で言った。
「そんな風に話してくれて嬉しいよ。私もプレッシャーを感じる時があるけど、誰かが応援してくれるとすごく力になるんだ。」

その言葉を聞いた美咲は、自分の応援が由佳にとって大切なものだと感じられるようになった。


家族との共有で見えた答え

その夜、美咲は家族に由佳との会話を報告した。
「由佳もプレッシャーを感じてたんだって。それを聞いて、自分の気持ちも少し整理できたよ。」

誠一が頷きながら言った。
「相手の気持ちを理解しようとする姿勢、それ自体が立派な応援だよ。」

亮太も続けた。
「僕も応援する時、どんな言葉が相手に響くのか考えるようにしてるよ。それが一番難しいんだよね。」


まとめ:応援する側とされる側の心理

有紗が美咲の悩みに寄り添ったことで、家族全員が「応援すること」の本質を考えるきっかけとなった。

  • 応援できない気持ちは、自分の不安や焦りを見つめ直すチャンス
  • 応援される側もプレッシャーを抱えていることを理解することが大切
  • 応援は相手との対話や思いやりを通じて自然に生まれるもの

有紗は、家族とともに「応援すること」が持つ深い意味を共有し、これからも支え合いながら成長していこうと心に決めた。

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