理想の夫婦って何？：美咲が考えた仲の良い両親の意味

「お父さんとお母さん、二人で東京に旅行したんだって。」

リビングで亮太がそう言った時、私は驚きよりも「やっぱりな」という気持ちの方が強かった。
うちの両親は、昔から仲が良い。だから、二人だけで旅行するなんて、それほど不思議ではなかった。

でも、亮太の反応は少し違った。

「なんかさ、友達に話したら『新婚みたいで恥ずかしい』とか言われたんだよな。」

亮太は少し照れくさそうに言ったけれど、私にとっては、それがどうして恥ずかしいことなのか分からなかった。
むしろ、仲が良いことは、家族としてとても幸せなことなのに。

私は、高校の友達と話してみることにした。

「うちの親、二人で旅行に行ったんだけどさ、仲良すぎるって思う？」

すると、友達は意外な答えを返してきた。

「えっ、いいじゃん！羨ましいよ。」

「うちなんて、親がいつも喧嘩してるから、そういうの憧れるな。」

私は、その言葉に少し驚いた。
私にとっては「当たり前」だった両親の仲の良さが、他の人にとっては「憧れ」になることもあるのかと。

小さい頃から、家の中にはいつも穏やかな空気が流れていた。
お父さんとお母さんが冗談を言い合ったり、一緒に料理をしたりする姿を見て育ったから、私にとって「夫婦が仲良し」というのは、ごく自然なことだった。

でも、それが当たり前ではない家庭もある。

「両親が仲が悪いと、家の中の雰囲気も悪くなるし、なんとなく居心地が悪いんだよね。」

友達のその言葉を聞いて、私は初めて気づいた。
うちの家が穏やかで、家族がなんでも話せる関係なのは、両親が仲良くしているからなのかもしれない、と。

ある日、私はお母さんに聞いてみた。

「どうしてお父さんとそんなに仲がいいの？」

すると、お母さんは少し考えてから、こう答えた。

「たぶんね、お互いを尊重しているからかな。」

「尊重？」

「そう。自分の意見を押し付けるんじゃなくて、相手の考えもちゃんと聞くこと。お父さんとは、そういうバランスが取れてるのかもね。」

その言葉に、私は「なるほど」と思った。

夫婦って、お互いを思いやることで関係が築かれるものなんだ。
それを見て育ったから、私は人との付き合い方も自然とそういう考え方になっているのかもしれない。

私は、理系の道を進みたいと思っている。
将来はエンジニアになりたいし、仕事に没頭する人生も悪くないと思っている。

でも、ふと考えた。

「もし、私が結婚したら、両親みたいに仲の良い夫婦になれるんだろうか？」

今はまだ結婚なんて先の話だけど、いつか大切な人と人生を歩む時、私はお母さんのように、相手を尊重しながら一緒にいられるだろうか。

両親の関係を見ていると、それが幸せな家庭を作る秘訣なんじゃないかと思う。

両親が仲がいいことは、決して恥ずかしいことではなく、むしろ誇るべきことだと気づいた。
それは、家族の雰囲気を良くし、子どもにも影響を与える大切な要素だから。

これからも、私は両親の関係を大切に見守っていきたい。
そして、いつか自分が大切な人と一緒にいる時に、その姿勢を思い出せるようにしたいと思う。