母から聞いた「年収の壁」って何?
「お母さん、年収の壁ってなに?」
ある日、リビングでスマホをいじっていた俺は、ふと母・有紗に聞いてみた。
きっかけは、姉の美咲がアルバイトについて話していたことだ。
「バイト、いっぱい入りたいけど、年収の壁があるから調整しないといけないんだよね」
そう言った美咲の言葉が気になっていた。
「たくさん働いたほうが、お金がいっぱいもらえるんじゃないの?」
母は少し考えてから、ゆっくりと説明してくれた。
「うん、確かにたくさん働けばその分お金はもらえるけどね。でも、一定の金額を超えると、税金がかかったり、家族の扶養から外れたりすることがあるのよ」
「へぇ…それって困ることなの?」
母はうなずいた。
「場合によっては、手取りが減ったり、社会保険料を払わなきゃいけなくなったりするの。だから、多くの人が『年収の壁』を意識してるのよ」
俺は「よく分からないな…」と思いながら、さらに聞いてみた。
「年収の壁」の仕組みとは?
母の話によると、年収の壁にはいくつかの種類があるらしい。
① 103万円の壁(所得税がかかる)
年間の収入が103万円を超えると、所得税が発生する。
「つまり、103万円以下なら税金がかからないってこと?」
「そう。でも、これだけならそこまで大きな影響はないわね」
② 106万円の壁(社会保険料が発生する)
年間の収入が106万円を超えると、条件によっては社会保険料を払う必要が出てくる。
「社会保険って?」
「健康保険とか年金のことよ。会社によっては106万円を超えると、従業員として社会保険に加入しなきゃいけなくなるの」
「なるほど…」
③ 130万円の壁(扶養から外れる)
130万円を超えると、家族の扶養から外れ、自分で健康保険料や年金を払うことになる。
「これが一番大きな影響があるの。例えば、お父さんの扶養に入っている人が130万円を超えてしまうと、扶養から外れてしまうのよ」
「なるほど…だから、お姉ちゃんも気にしてたのか」
たくさん働くと損なの?
俺は少し混乱していた。
「でもさ、お金をいっぱい稼ぐのって悪いことじゃないでしょ?」
「そうね。でも、一番問題なのは『少し超えた時』なのよ」
母が言うには、例えば年収129万円の人と、130万円ちょうどの人では、後者の方が手取りが減ってしまうことがあるらしい。
「へぇ…なんか損してる気がするな」
「そうなの。だから、130万円を超えてがっつり稼ぐか、それ以下に抑えるか、どちらかを選ぶ人が多いのよ」
「でも、それって変じゃない?」
「そうね、本来は自分がやりたいだけ働けるのが一番なんだけど…この制度があるせいで『働きすぎると損をする』という状況になるのよ」
「…なんかモヤモヤするな」
まだ働いたことのない俺が考える「お金」と「仕事」
俺はまだ中学生だから、実際に働いたことはない。
でも、お金は必要なものだし、将来は仕事をすることになる。
「でもさ、お母さんはそれでも働いてるでしょ?」
母は少し笑って、「そうね」と言った。
「お母さんは、単純にお金のためだけじゃなくて、やりがいがあるから働いてるのよ」
「やりがい?」
「うん。働くことで成長できるし、社会とつながれるからね」
なるほど。
俺はお金のことばかり気にしていたけど、「働くこと」には別の意味もあるのかもしれない。
年収の壁を気にせずに働く方法はあるの?
母に聞いてみた。
「じゃあ、お母さんは年収の壁を気にしないの?」
「もちろん考えるけど、それを理由に働く時間を減らしたりはしてないわ」
「どうして?」
「だって、働くことで得られる経験やスキルは、将来的にもっと大きな収入につながるから」
なるほど。
母の考えでは、「目先の年収の壁を気にするより、長い目で見たキャリアを大事にするべき」ということらしい。
「例えば、お母さんは副業もしてるでしょ?」
「うん、してるね」
「そうやって色々な働き方を組み合わせれば、年収の壁の影響を受けにくくなるのよ」
働くこととお金の関係を考える
この話を聞いて、俺は改めて「お金と働くこと」について考えた。
- お金を稼ぐことは大事だけど、長期的に考えることも必要
- 年収の壁を気にしすぎると、働く機会を逃すことがある
- 仕事はお金を稼ぐだけじゃなく、成長や社会とのつながりにもつながる
「そっか。お金のことばっかり考えるんじゃなくて、どう働くかも大事なんだね」
母はうなずいた。
「そうよ。亮太も将来働くようになったら、自分にとってのベストな働き方を見つけてね」
「うん、ありがとう!」
こうして、俺は初めて「年収の壁」についてちゃんと理解した。
そして、働くことの意味について、少しだけ考えられるようになった気がする。
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