お母さんがPTA役員に?
ある日、夕食の席でお母さんが話し始めた。
「来年度、亮太の中学校でPTAの広報役員をやることになったの。」
えっ、PTA?
正直なところ、最初はピンと来なかった。
小学生のころは、運動会や学芸会でPTAの人たちがテントを立てたり、
配布物を作ったりしていたのを見かけたくらいで、それ以上の印象はなかった。
「なんで今、忙しいのにやるんだろう?」
保育士の仕事に加えて、Webライティングの副業までやっているお母さんが、
さらにPTA役員を引き受けるということに、私は少し驚いた。
でもその一方で、「なぜ今の時代に、PTAが必要とされているのか?」という疑問も湧いてきた。
私はITエンジニアを目指している高校3年生。
情報や仕組みをロジカルに整理して考えるのが好きなタイプだ。
だから今回は、**「PTAの現在」と「これからのあり方」**について、
お母さんの話をきっかけに、少し自分なりに調べて考えてみることにした。
1. そもそもPTAって何?
まずは基本から確認。
PTAは「Parent-Teacher Association(保護者と教師の会)」の略で、
学校と家庭、地域をつなぐ役割を担う保護者主体のボランティア組織だ。
昭和時代から続く仕組みで、
「子どもの健やかな成長を支えるために、保護者が学校と連携して活動する」という目的がある。
具体的な活動内容は学校によって違うけれど、一般的には――
- 学校行事の運営サポート(運動会、文化祭など)
- 登下校の見守りや安全パトロール
- 広報誌の作成
- 地域とのつながりを持つ活動(クリーン活動、防災訓練など)
- 教育に関する講演会や学習会の企画
…といったことを行っている。
一見、「昔ながらの保護者活動」というイメージがあるけれど、
最近ではその役割や在り方に変化が求められているという話も多い。
2. 現代のPTAが抱える課題とは?
PTAについて調べていくうちに、いろんな課題が見えてきた。
代表的なものは、次の3つ。
◆ 1. 参加の「義務感」とプレッシャー
PTAは「任意参加」が原則のはずなのに、
実際は「全員加入が当たり前」「役員を一度はやらなければならない」という風潮が根強く残っている学校も多い。
「断りづらい」「辞退すると白い目で見られる」――そんな声もある。
お母さんも、「断ろうか迷ったけど、誰も立候補がいなかったから引き受けた」と話していた。
つまり、無理してやっている保護者が少なくないということ。
◆ 2. 時代に合わないアナログな運営体制
多くのPTAでは、連絡方法がいまだに紙の配布物や電話連絡だったり、
会議が平日の日中に学校で対面開催されたりしている。
共働き家庭が増えている中で、「平日の昼間に学校に来てください」と言われても無理な人が多いのは当然だ。
また、ITの活用が進んでいないために、
連絡漏れや非効率な作業が負担感を増やしているのも問題だと感じた。
◆ 3. 目的や効果が見えづらい活動
PTAの活動が、「子どもや保護者にとって本当に必要なのか?」がはっきりしないケースもある。
例えば、花壇の手入れや古紙回収などの活動が、
時代に合っていないと感じている若い世代も多いようだ。
「誰のために、何のためにやっているのか?」が見えない活動は、どうしてもモチベーションが上がらない。
3. これからのPTAに必要なことは?
じゃあ、これからのPTAはどうあるべきなのか?
自分なりにロジカルに考えて、3つのキーワードにまとめてみた。
◆ キーワード①:柔軟性(Flexibility)
今のPTAは「一律」で「固定化された」仕組みになりがち。
でも、家族の形も働き方も多様化している時代には、
柔軟な参加スタイルが必要だと思う。
- 会議は対面だけでなく、オンライン参加OK
- 年間通しての役割ではなく、単発のイベント参加も選べる
- 保護者の得意分野を活かした“プロジェクト型”のチーム運営
例えば、ITが得意な人はシステム整備、文章が得意な人は広報、
料理が得意な人はバザーや給食イベントなど。
**「やれることを、やれるときに、やれる人がやる」**という考え方が、これからのスタンダードになるべきだ。
◆ キーワード②:デジタル活用(Digitalization)
今こそPTAに必要なのは、「IT化」だと思う。
- 連絡はLINEやSlackなどのチャットツールを活用
- 書類や配布物はGoogleドライブなどのクラウドで共有
- 会議はZoomなどのオンラインツールで開催
これだけで、業務の効率化と負担の軽減が大きく進む。
情報共有のスピードも上がるし、参加できる人も増える。
私自身、ITエンジニアを目指している立場として、
「PTAこそ、もっとデジタル活用すべき領域」だと感じた。
◆ キーワード③:目的の“見える化”(Visualization)
何のために、誰のためにやる活動なのか?
それを明確にすることで、参加の意義が伝わりやすくなる。
✔ この活動は、子どもたちの安全を守るため
✔ このイベントは、地域とのつながりを作るため
✔ この会議は、保護者の声を学校に届けるため
目的が明確になれば、参加する側のモチベーションも変わってくる。
「やらされている」ではなく、「自分も意味あることに関わっている」と感じられるから。
4. お母さんに伝えた、私の正直な気持ち
お母さんがPTA役員をやると知ったとき、最初は「大変そうだな」としか思っていなかった。
でも、いろいろ調べて考えてみると、
PTAは単なる“ボランティア”じゃなくて、家族や地域と学校をつなぐ大事な存在なんだとわかった。
それと同時に、
「今の時代に合わせたPTAの形」に変えていかないと、続けるのが難しいのも事実。
だから私は、お母さんにこう伝えた。
「もし広報の仕事で、ITが必要なら、手伝うよ。Googleドキュメントとか、Canvaとか教えられるし。」
お母さんはちょっと驚いた顔をして、それから嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、美咲先生に教わることにしようかな。」
まとめ:PTAのこれからを“自分ごと”として考える
✔ PTAは、保護者と学校、地域をつなぐ重要な役割を担っている
✔ しかし現在は、参加の義務感や非効率な運営が課題になっている
✔ 柔軟性・デジタル化・目的の見える化が、これからのPTAに必要な改革
✔ 若い世代の視点やスキルが、PTAをアップデートする鍵になる
私はまだ高校生で、PTAの活動に直接関わる立場ではないけれど、
家族や地域の“仕組み”を、テクノロジーやアイデアで支えていくことができる時代に生きている。
「誰かのために、少しだけできることを考える」
それも、未来をつくる一歩なんじゃないかと思った。
これからも、社会の「当たり前」を疑って、
新しい価値をつくれる人でいたい。
お母さんのPTA役員の話は、私にそんなことを考えさせてくれた。
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