冬の夜、新潟の田中家ではこたつを囲んで家族が過ごしていた。高校生の美咲は進路選択に向けて、大学のパンフレットを広げており、中学生の亮太は学校のサッカー大会に向けて練習計画を考えていた。
そのとき、美咲がため息をつきながら言った。
「お父さん、大学受験の勉強、何から始めていいか分からなくなってきた。」
「僕もさ、サッカーの練習計画立てたけど、いつも途中で挫折しちゃうんだよね。」亮太もぼそりと言った。
誠一は二人の様子を見て、ふと提案した。
「よし、今日はお父さんが会社で学んだ目標達成のフレームワークを教えてやろうか。」
「目標達成のフレームワーク?」美咲が首をかしげる。
「そんなの学校じゃ教わらないよ。」亮太も興味深げだ。
「そうだろう。でも、これを使えば、二人ともやるべきことが見えてくるはずだ。」
SMARTフレームワーク
誠一はノートとペンを取り出し、テーブルに置いた。そして「SMART」と書いて見せた。
「これは『Specific(具体的)』『Measurable(測定可能)』『Achievable(達成可能)』『Relevant(関連性)』『Time-bound(期限付き)』の頭文字を取ったものだ。これに沿って目標を設定すると、うまくいきやすいんだ。」
「へえ、なんか難しそう…。」亮太は半信半疑の表情を浮かべたが、美咲は興味津々で聞いていた。
実例で学ぶ
「じゃあ、まず美咲の目標を設定してみようか。大学受験に関して何がしたい?」
「うーん…。志望校の過去問を解けるようになりたい。」
「いい目標だ。でも、それをSMARTにするとどうなるか考えよう。まず『具体的』、つまり何をどのくらいするのかを考える。」
美咲は少し考えてから言った。
「志望校の過去問を月に3回、1年分ずつ解く…とか?」
「そうだ。それが『具体的』だ。そして『測定可能』は、どれだけ進んでいるか分かるようにすること。例えば、解いた過去問の数を記録する。」
「なるほど…。」
「『達成可能』は、自分に無理のない範囲かどうかだ。月に3回って、美咲にとって現実的か?」
「うん、それならできそう。」
「『関連性』は、自分の最終目標にちゃんとつながっているか。大学受験に向けて過去問を解くのは大事だよな?」
「もちろん!」
「最後に『期限付き』。たとえば、『1月末までに志望校の3年分の過去問を終わらせる』みたいに、具体的な締め切りをつけるんだ。」
美咲は目を輝かせながらメモを取った。
次に亮太の番だ。
「僕の目標は…サッカーの試合で1試合2ゴール決めたい!」
「いい目標だ。でも、これもSMARTにしよう。まず『具体的』は?」
「うーん…試合前に1日2時間、シュート練習をする。」
「『測定可能』は?」
「シュートの成功率を記録する?」
「その通り。『達成可能』はどうだ?2時間の練習は無理なくできる?」
「たぶんできる。」
「『関連性』もバッチリだな。試合でゴールを決めるための練習だからな。そして『期限付き』は、次の試合までの2週間に設定する。」
亮太はすぐにノートに計画を書き始めた。
家族全員の学び
その夜、こたつの中で誠一は満足げに笑った。
「どうだ?目標がSMARTになると、少しだけ現実味が出てくるだろう。」
「うん、なんかやる気が出てきた。」美咲が笑顔で答える。
「僕もこれなら頑張れる気がする!」亮太もノートを見つめながら言った。
妻が台所から顔をのぞかせて言った。
「あなた、こんなに子どもたちに分かりやすく教えられるなんて、意外ね。」
「会社で鍛えられてるからな。」誠一は照れくさそうに笑った。
家族の目標が明確になり、リビングには新しい活気が生まれた。目標達成フレームワークを学んだ夜は、田中家に新たな挑戦のきっかけをもたらしたのだった。
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